東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

森田商店
(もりたしょうてん)

森田商店
(もりたしょうてん)

美しい斑(ふ)の入ったタイマイの甲羅(こうら)。希少素材・タイマイの甲羅を、天然の美しさをたたえた宝飾品に。

美しい斑(ふ)の入ったタイマイの甲羅(こうら)。

体験しよう

生地の切り出しから磨きまで「江戸鼈甲」の製造工程をあますところなく、見学・体験できます。ここでは体験をレポートしますが、見学工程も同じで、職人さんの作業のようすを見ることができます。体験では、2時間程度でべっ甲のストラップを作ります。最後に好きな文字を刻印してもらえますよ。

糸鋸(いとのこ)による生地の切り出し。体験は、生地の切り出しから始まります。熱を加える前の生地は非常に硬く、切り出すのは一苦労でした(となりで、職人さんは、あっという間に作業を終えていましたが……)。

糸鋸(いとのこ)による生地の切り出し。

「がんぎ」は、べっ甲職人独特の道具。「がんぎ」という道具で、甲羅の表面の傷などを取ります。この作業は、のちの「張り合わせ」の工程の出来栄えに影響する大切な作業です。

「がんぎ」は、べっ甲職人独特の道具。

水に浸す時間は、職人の経験で判断します。2枚の生地を重ねて糸で縛り、水に浸けます。熱を加える前の下準備です。

水に浸す時間は、職人の経験で判断します。

接着剤を使わずに、水と熱と圧力のみで生地を張り合わせます。水に浸した生地を柳の板ではさみ、熱した鉄の板を上にのせ、圧力をかけて張り合わせます。このときの温度と圧力の加減は、職人の長年の経験がものをいうため、この作業は見学のみです。

接着剤を使わずに、水と熱と圧力のみで生地を張り合わせます。

生地を布ではさみ、その上から熱した鉄板を乗せます。圧力を加えた生地のふくらみを戻すために、ふたたび、熱を加えます。製品の良し悪しを左右する大事な工程で、この作業も見学のみです。

生地を布ではさみ、その上から熱した鉄板を乗せます。

ここからは職人さんにおまかせです。小刀・ヤスリを使って、形を整えます。ここまでくれば、もう最終段階。

生地を傷つけないように、ていねいに作業します。

あやまって自分の爪を傷つけないように注意。いよいよ、最終工程の「磨き」の作業です。回転しているバフに当てて、ツヤを出します。

あやまって自分の爪を傷つけないように注意。

こんなに美しくなるなんて、感激です。磨きを終えたべっ甲は、独特の美しい光沢をたたえます。

こんなに美しくなるなんて、感激です。

完成したべっ甲のストラップ。磨き終えたべっ甲に、自分の名前やペットの名前など、好きな文字を彫ってもらえます。体験は磨きまでなので、完成品は後日郵送となります。

完成したべっ甲のストラップ。

担い手の声

「家族のすすめで一般企業に就職してからこの道にはいりました。外の世界が見られたので、視野が広くなり、より柔軟に仕事に取り組むことができるようになったと思っています」伝統の技はもちろん、職人仕事の醍醐味を伝えたい。

森田 孝雄 もりた たかお
荒川区伝統工芸保存会会員
東日本べっ甲事業協同組合会員
荒川区指定無形文化財保持者・森田正司氏後継者

「今、次男がべっ甲職人の修業中です。息子に伝えてやりたいのは「失敗するのは構わない。なぜできないのか、どうしたらうまくいくのか、知恵を絞って考えるのが大事だ」ということ。私もいつでも難しい細工のプロセスを頭の中でいろいろ考えて、試しています。うまくいったときの"どうだ! やってのけたぞ"という気持ちの高ぶりはこの仕事の醍醐味ですね。ノートに企業秘密がいっぱい書いてあるんだけど、どこへやったかな。こまかい部品作りが得意なので、これから金属細工の職人さんとコラボしてみたいですね」

先祖は肥後細川藩の江戸屋敷に出入りしていた職人。屋号は「伊勢屋」だから名古屋の方の出らしいですよ。