東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

東京手彫り印章

とうきょうてぼりいんしょう

東京手彫り印章

すべての工程は“唯一無二”の為に
日常でも、人生の節目においても、「印章」は自己の権利や義務、所有の“唯一無二”の証明として日本人の社会生活に密接に関わってきた。江戸時代から続く東京手彫り印章は、文字のデザイン、字入れ、荒彫りといった異なる技術が必要とされるが、すべての工程をたった一人で行う。髪の毛一本分の精度が求められる彫刻を施せるのは、都内でも一握りの職人のみ。実に緻密で、気の遠くなるような作業を重ねて完成させる印章には、随所に熟練の技が光る。印章が大量に製造される現代において他に類を見ない技術力は、機械では決して真似ることができない“唯一無二”の芸術作品とも言える。美しい東京手彫り印章の伝統は、これからも職人の思いとともに受け継がれていく。
主な製造地 千代田区、港区、武蔵野市ほか
指定年月日 令和5年1月26日
伝統的に使用されてきた原材料 柘植、水牛

伝統的な技術・技法

  1. 印稿は、画数などを考慮し、出来上がりの印影をイメージして、彫刻をする文字を用紙に下書きする。
  2. 字入れは、各文字の配置に注意しながら、印稿の逆字になるように、印材へ小筆により黒字で書き入れる。
  3. 荒彫りは、篆刻台等で挟んで固定した印材に印刀で彫刻していく。
  4. 仕上げは、文字の太さや起筆終筆に注意し、線質を繊細に表現できるよう仕上刀で彫刻する。

沿革と特徴

中国に端を発する印章制度の歴史は、奈良時代の「大化の改新」に遡る。

時代を経てさまざまな印章が用いられ、江戸時代に藩の公文書、村や商家の帳簿などに印章を使用する習慣が広がった。また、農民が使用する実印を名主が印鑑帳に登録し、必要に応じて照合できるようにしたという。
幕府御用達の御印判師や、庶民に印章が普及してきたことにより、印判を彫り、印判を生業とする印判師が江戸に広まっていった。

明治時代には、太政官布告により、すべての国民に実印の使用が認められるようになり、印章が日本人の社会生活に定着していくこととなる。

東京印章協同組合は、大正8年に印章を製作販売する業者の組合として、八代目大橋素十(おおはしそじゅう)を中心に創設され、100年以上の歴史を有している。
東京手彫り印章の特徴は、すべての工程を手作業で熟練の職人が仕上げていること。特に印章を彫る前の下書きとなる「印稿」は、印章を作るうえで最も大切な作業とされている。

連絡先

産地組合名 東京印章協同組合
所在地 〒111-0051 東京都千代田区神田神保町2-4
電話番号 03-3261-1017
ウェブサイト http://www.tokyoinsho.jp/