東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

東京琴

とうきょうこと

東京琴

奏者の力量にチューニングする。つまり、世界にひとつしか存在しない。
伝統的な和楽器である東京琴は、18世紀頃に現在の原形が作られ、時代と共に改良を重ねてきた。長さや厚み、反り具合を変えて音量を増やし、琴爪を大きくして音質をクリアにすることで、東京琴ならではの美しい音色と余韻が確立された。東京琴が目指す優れた琴とは、職人と奏者、そして両者を仲介する楽器店が満足するものである。職人は奏者のオーダーをもとに、奏者の力量や修練を踏まえながら、理想の音が出ることを考えて制作に取りかかる。甲羅と呼ばれる胴体部分を削る作業は、削り加減によって音色が左右される重要な工程だ。素材となる桐は産地や育った環境によって硬さや木味が異なり、職人は甲羅の厚さを調節しながら内側を削っていく。桐の年輪や木口を見極め、表面の木目の美しさを生かすために、完成品の出来栄えを予測しながら仕上げに取りかかる。そうした職人の技と経験が琴づくりに注がれ、職人と奏者の合作として唯一無二の音を生み出している。
主な製造地 文京区、世田谷区、渋谷区ほか
指定年月日 平成3年8月15日
伝統的に使用されてきた原材料 桐、紅木紫檀、紫檀、絹糸

伝統的な技術・技法

  1. 胴造りは、甲羅の長さ、巾を決め、甲表を木目が良く出るようにゆるい球面にするためにムクリ(縦方向のソリ)山形(横方向のソリ)を内丸鉋で削る。甲裏を釿で削り、外丸鉋により仕上げ、ノミで綾杉文様を彫る。さらに四本の桟木と関板、糸じきりを彫り込む。
  2. 甲焼きは、コンロに木炭で火を起こし、焼ゴテを赤く加熱して、表面全体を焼き上げる。
  3. 包み部品(口前、四分六、柏葉、足廻り、裏穴「音穴」)を作成し、甲羅に彫り込み、接着する。
  4. 芯座打は龍眼(芯座)を六分板に等間に13個あけた穴に木槌で打ち込む。龍尾にはすべり止めと装飾を兼ねた布を張る。

沿革と特徴

わが国における筝曲の発祥は九州・久留米の善導寺の僧賢順(けんじゅん)が、雅楽と琴曲の影響を受けて筑紫流(ちくしりゅう)といわれる曲を、室町時代の末期に大成したことに始まる。

筑紫流はその後、八橋流(やつはしりゅう)を経て生田流、山田流を生みだした。

18世紀に江戸の山田斗養一(宝暦7年、1757年生まれ)は、従来の筝曲が三味線の伴奏役であったのに対し、琴を主演奏楽器として曲を作った。山田流、山田検校(斗養一)は大変な美声の持ち主であったので、江戸の人気を得たといわれ、爪や楽器の改良も行い現在の「山田琴」の原形を作った。

さらに山田流の曲に合わせて琴師重元房吉(しげもとふさきち)が楽器の改良を行った。

房吉は琴の長さを6尺にし(従来より3寸短い)、琴の厚みもそれまでのものより厚くし、ムクリ(縦方向のソリ)を強くして音量の増加を図り、かつ琴爪を大きくしたので音質も明瞭になった。

これが東京琴の特徴であり、現在、山田流、生田流を問わず広く使用されている。

コトを表す漢字に「筝」と「琴」がある。

筝は現在、普通にコトと読んでいる13弦の楽器をさし、琴は正確には柱(じ)を用いない7弦の楽器で「きん」と読む。

現在では常用漢字の中に琴の文字しか含まれていないため、筝より琴の方が実際にはより多く使われている。

琴に使われる材料には、桐、紅木、紫檀など。また琴の糸には絹糸が使われている。

連絡先

産地組合名 東京邦楽器商工業協同組合
所在地 〒132-0035 江戸川区平井4-1-17 向山楽器店内
電話番号 03-5836-5663