東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

東京銀器

とうきょうぎんき

東京銀器

パリ万博で世界を驚嘆させた、和製銀器の重厚な輝き。
ボリビアのポトシにあるセロ・リコ銀山と並び、日本の石見銀山はかつて世界二大銀山に数えられ、日本は世界最大級の銀の産出国だった。916年には既に銀製品が存在し、17世紀頃には銀師と呼ばれる職人が大名家に重用されると共に、庶民も広く銀器を愛用した。
日本の銀製品が1867年のパリ万博に出品された際には、銀製品に精通したヨーロッパの人々でさえその完成度の高さに驚嘆したという。
無論、ヨーロッパから受けた影響は色濃いが、鍛金や象嵌など、世界に誇る技術も多い。厚さ1ミリほどに延ばされた地金を金槌や木槌で叩き、徐々に形を作り上げていく鍛金、表面に金槌の模様を刻印する加飾など、緻密さを極めた技術は海外では真似できないものだ。金槌で模様打ちされた槌目・岩石目・ゴザ目は独特の風合いを持ち、使えば使うほどに凹凸が手になじんでいく。長寿の祝いに贈られる銀杯、アジア圏で絶大な人気を誇る急須やヤカンなど、百年経っても色褪せない重厚な輝きに魅了される人は後を絶たない。
主な製造地 台東区、荒川区、文京区ほか
指定年月日 昭和57年12月24日
昭和54年1月12日(国)
伝統的に使用されてきた原材料 純度1,000分の925以上の銀

伝統的な技術・技法

  1. 成形は、①鍛金にあっては、地金を金鎚及び金具を用いて手作業で行い、②ヘラ絞りにあっては、地金を木型 に当て、木型を回転させてヘラ棒を用いて手作業にて絞り込む。
  2. 部品接合は、銀鑞(ぎんろう)付け、カシメ又は鋲止めによる。
  3. 加飾は、①模様打ちにあっては、金鎚又は鏨(たがね)を用い、②切嵌の図柄の切落し・絞金造りにあっては、糸鋸・切鏨(きりたがね)を用い手作業による。
  4. 色仕上げは、煮込み法又は金古美(きんふるび)液若しくはタンバン古美液を用いる。
  5. ヘラ絞りで成形したものは、加飾をする。

沿革と特徴

銀製品が本格的に作られるようになったのは室町時代に各地で銀山が発見され、西洋より渡来した人々から新しい精練法を教授されてからのことだといわれている。

金属は叩いて薄く延ばしたり、熱を加え柔らかくしたり、溶かしたりしていろいろな形にすることができる。こうした金属の性質を利用して、古くから金・銀・銅・錫・鉄などを用いて武具・食器・仏具・装身具などがつくられてきた。

古代エジプトや中国では、銀の産出量が少なく、銀は金より貴重な物だったといわれている。ローマ時代の紀元5世紀頃には銀の産出量も増え、銀器が珍重され、貴族の宴会にはなくてはならないものとなった。

欧米では銀製品が好まれ、富裕な家庭には立派な銀の食器が備えてあるといわれている。こうしたことからイギリスには、裕福な家庭に生まれてくる子どもや、幸運に生まれつく子どものことを「銀のスプーンをくわえて生まれてくる」(be born with silver spoon in one's mouth) という諺がある。

日本の銀製品の良さは、慶応三年(1867)パリで開かれた万国博覧会で世界の人々に知られた。明治維新とともに、日本情緒豊かな肉厚の花器が東京でつくられ横浜の港から数多く輸出された。戦後、外国人の往来が多くなった東京ではスプーン・フォーク・装身具類をはじめ銀製品の需要も拡大し、今日銀製品は東京が主要な産地である。なお、「純銀」とは純銀99.9%以上のものをいう。

連絡先

産地組合名 東京金銀器工業協同組合
所在地 〒110-0015 台東区東上野2-24-4
電話番号 03-3831-3317
ウェブサイト http://www.tokyoginki.or.jp/