東京三味線
とうきょうしゃみせん
- 奏者と職人のアンサンブルで、その音色は奏でられる。
- 四百年以上の歴史を持つ伝統的な和楽器である三味線は、用途と大きさによって大きく三種に分類される。原型とされる長唄用を代表とする細棹、民謡や箏との合奏に用いる地唄用を代表とする中棹、津軽三味線や義太夫に用いる太棹で、いずれも棹の部分が音色の要となる。関西地方では棹づくりは分業されているが、東京三味線では一人の職人が仕上げまでを行う。奏者と向き合い、一人ひとりに合った三味線を作るためだ。棹の素材はインド産の紅木が最高級とされ、硬い木質が良質な音を生む。ただし、硬い木質の棹で求める音を出すには相当な力量を必要とする。職人は奏者の力量を見極めた上で素材を選び、求める音色を如何に弾きやすくできるかを考えながら、修理は必要とするが末長く使い続けるのことのできる三味線を作り上げていく。オーダーメイドの仕上がりに対する奏者の信頼は厚く、近年は古い三味線を修理・再生し、初心者に安く提供する活動も盛んである。
主な製造地 | 中央区、台東区、豊島区ほか |
---|---|
指定年月日 | 平成2年8月9日 |
伝統的に使用されてきた原材料 | 紅木(紫檀)、紫檀、樫、花櫚(かりん)、桑、皮(猫、犬)、生糸 |
伝統的な技術・技法
- 継手(つぎて)作りは三つに切断された材料を、鋸とのみで「ほぞ」と「溝」を作り、徐々につなぎ合せていく。
- 綾杉彫りは留めを切った後に、裏をノミでさらい、更に生反(なまぞ)りでさらい、続いて別のノミで綾杉を丁寧に一本づつ掘っていく、その際、綾杉が一本でも欠けないように細心の注意を要する。
- 胴付けは四枚の綾杉を掘り終わった材料を膠(にかわ)で接着する。堅木のしかも楕円状のもの四枚を金物も使わず、膠だけでもたせるのでその接着面は精巧さを要求される。
- 皮張りは、三味線用に仕上げられた皮を、先ず水で濡らしてよく絞った布を皮に巻き、皮を湿らせ、木栓(きせん)という特殊な道具を使い、皮を止め、張り台にのせ、縄を掛けて徐々に皮を張っていく。
沿革と特徴
日本の三味線の祖は、中国の三弦にある。三弦は中国の元におこり、14世紀末には琉球国に伝わり蛇皮を用いたので蛇皮線と呼ばれた。
わが国に初めて三弦が琉球から伝えられたのは、室町時代末期永禄年間(1558-70年頃)のことで境野港に初めて入ってきたと考えられている。
当時琵琶法師が蛇皮線を用いて小唄や踊歌などにあわせて弾いている間に蛇皮が破れたため、他の動物をいろいろと試み、ついに猫皮を用いることを考え出した。
かくして琵琶の撥で演奏するというわが国独特の三味線が出来上がった。
江戸での発達は、寛永の頃に神田治光や石村近江のような名匠が現れ、現在の三味線音楽の基礎ができあがり歌舞伎の長唄や、義太夫、一中、常盤津、清元、新内の邦楽の発達とともに三味線作りも発達した。
三味線には独特の「サワリ」という余韻(響き)を残す現象がある。「サワリ」の音楽的効果には日本人の民族性が関係している。
原色よりも中間色を好む日本人は原色よりも複雑な倍音(オーバートーン)を含む音を好むようである。伝統的に使用されてきた原材料で棹の部分には紅木(インド産)、紫檀、樫、花櫚、桑などが使われる。皮張りには猫や犬の皮が使われる。
連絡先
産地組合名 | 東京邦楽器商工業協同組合 |
---|---|
所在地 | 〒132-0035 江戸川区平井4-1-17 向山楽器店内 |
電話番号 | 03-5836-5663 |