東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

江戸甲冑

えどかっちゅう

江戸甲冑

子どもへの愛が、堅牢な鎧に姿を変えた。
8〜12世紀、武将が騎馬に乗って戦うようになると、全身を弓矢から守るための防具として、大鎧と呼ばれる甲冑が登場した。江戸甲冑がモチーフとするのは、その大鎧である。甲冑は防具である一方、金工や漆工、染織皮革などの技術が結実した、日本独自の美を内包した装束でもある。二百年以上、大きな内戦が起きなかった17〜19世紀中盤になると、親が男子の健やかな成長を願う端午の節句において、強さのシンボルともいえる大鎧を飾るようになった。その後、兜や鎧、それらを装着した五月人形を飾る習慣が庶民に浸透した。きらびやかな装飾を施した京都の甲冑に対し、江戸甲冑は入念な時代考証のもとに大鎧を再現し、重厚な意匠と質実剛健を特徴とする。本物の甲冑同様、細部の部品まで手作業で作るため、完成までの工程は五千にも及ぶ。子が成長してからも親が子を想う気持ちを感じてほしいという職人の想いは、頑丈で色褪せない風格を持った甲冑に注がれ、絶えることのない親の愛の結晶として子どもに受け継がれていく。
主な製造地 墨田区、台東区、文京区ほか
指定年月日 昭和61年7月18
平成19年3月9日(国)※
伝統的に使用されてきた原材料 真鍮、銅、鉄、和紙、皮革(鹿、山羊、豚、牛、馬)、絹紐、木綿紐など。

※ 国:「江戸衣裳着人形」と「江戸甲冑」が「江戸節句人形」の名称で国指定を受けている。

伝統的な技術・技法

  1. 鉢づくりは、たたき出し、絞り、はぎ合わせ、張抜き又は型抜きとする。
  2. 威板(おどしいた)に用いる小札(こざね)づくりは、小札張り又は小札割りにより行うこと。
  3. 威しは、毛引き威し又は素懸(すがけ)威しにより手作業にて行うこと。

沿革と特徴

端午の節句は、男の子の健やかな成長を祝う、古くからの伝統行事の一つである。

現存する記録によれば、奈良時代の「続日本紀」には、聖武天皇の宮中行事(733年)に端午の祝をしたと記されている。

当時は、邪気を払うために騎射(うまゆみ)の儀式を行い、天下安全を祈ったといわれている。

江戸時代中期には男の子が強くたくましく育つようにとの祝として、人気のあった武将の人形を飾っていた。その後、しだいに甲冑のみを独立して飾るように変わってきた。

今日では、鎧、兜、弓、太刀、陣笠、吹流し、かがり火などを飾るようになっている。

連絡先

産地組合名 東京都雛人形工業協同組合
所在地 〒111-0052 台東区柳橋2-1-9 東商センタービル4階
電話番号 03-3861-3950