東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

江戸更紗

えどさらさ

江戸更紗

インドが生んだ色鮮やかな布を、江戸が解釈すると、こうなった。
約三千年以上前にインドで誕生した更紗紋様は、木綿に五彩(臙脂、藍、緑、黄、茶)を用いた紋様染めである。アジアやヨーロッパなどに普及し、その土地の歴史や文化を反映しながら発展を遂げた。日本には14〜16世紀頃に伝来したといわれる。江戸更紗は、日本の伝統的な染色技法である型染めを応用することで、複雑な柄を多色刷りに仕上げる独自の進化を遂げた。少ない柄で二十枚、多い柄では九十枚ほどの型染めを繰り返すことで、淡い同色系のグラデーションの表現を可能にした。さらに日本の染め職人の技術を生かし、染料を生地に摺り込む刷毛の当て具合などをコントロールし、微妙な陰影やぼかしを生み出していく。原色の多色柄を基調とする海外の更紗と異なり、落ち着きのある色合いも特徴だ。現在はストールをはじめとする服飾品、パーテーションなどのインテリアにも挑戦している。異国情緒あふれる紋様と、江戸の美意識に適う渋い色合いは、文化を超えた美の融合として親しまれている。
主な製造地 新宿区、豊島区、荒川区ほか
指定年月日 昭和58年12月27日
伝統的に使用されてきた原材料 綿織物、絹織物

伝統的な技術・技法

  1. 型紙は、柿渋を用いて手漉和紙(てすきわし)をはり合わせた地紙又はこれと同等の地紙に切り込みをしたものとする。
  2. 型摺り染めは、手作業により行う。
  3. 地染めは、引き染めによる。
  4. 捺染糊は、もち米粉に米ぬか及び食塩等を混ぜ合わせたものとする。

沿革と特徴

更紗(SARASA)は今から三千年以上前の遠い昔、インドで発祥した。その技術は西はヨーロッパ諸国に東は中国へ伝えられ、またタイ、インドネシアへ、さらに海を越えて日本へ伝えられたといわれている。

更紗「SARASA」は、国際語として世界各国で使われている。

日本にはじめて更紗がもたらされた時期は、室町時代といわれ、ポルトガル、イスパニア、オランダのいわゆる南蛮船や紅毛船によって、インド更紗やヨーロッパ更紗が船載されたと伝えられている。

当時、日本人の衣料の材料は、ほとんどが絹や麻で、「SARASA」は、まったく知られなかった織物で、そのすばらしい素材(木綿)に対する驚きがあったものと思われる。

この更紗の魅力は、木綿に染められた五彩(臙脂(えんじ)、藍、緑、黄、茶)のカラフルな染め模様にある。

私たちが更紗に対して、なんとなく異国情緒的なイメージをもつのは日本伝来の小紋や友禅とは異なって、原産地の風土の匂いとエキゾチックな感じがするからではないだろうか。

江戸更紗の発祥は、江戸時代中期から末期にかけてといわれている。神田川をはじめとする東京の水は、硬水である。このため水中に含まれている鉄分が、染め上げるまでに化学反応をおこし、色が渋い色のものとなる。

そのため、江戸更紗独特の渋味が生まれ、「侘」落ちついた味わい「寂」枯れた渋味の入った色が完成する。

現在、我が国で産地を形成しているのは東京の江戸更紗だけである。

連絡先

産地組合名 東京都染色工業協同組合
所在地 〒169-0051 新宿区西早稲田3-20-12
電話番号 03-3208-15211
ウェブサイト http://www.tokyo-senshoku.com/