江戸簾
えどすだれ
- 閉ざされてもいない。開かれてもいない。それが心地いい。
- 軒先や窓の外に吊るし、日よけ、目隠し、あるいは室内の間仕切りとして用いられる簾。その歴史は古く、7〜8世紀に編まれた現存する日本最古の和歌集「万葉集」に簾の記述が認められる。17世紀以降は庶民にも普及。公家文化の影響から華やかなデザインの京簾に対し、江戸簾は庶民生活を重んじ、使い勝手やシンプルなデザインを追求してきた。生活環境やスタイルに応じてオーダーメイドで制作され、用途によって竹、ヨシ、ハギなどの素材を選択。竹の場合、三年ほど育って理想の色艶や固さになったものを切り、複数の編み方を使い分ける。完成した簾は通気性に優れ、心地よい風と共に運ばれてくる天然素材の香りが快適な空間を作り上げる。軒先などに立てかける葦簀と異なり、インテリアとして暮らしになじむことが重視され、“見ているだけで涼しい”と感じる用途を超えた風情も特徴だ。時代と共に変わりゆくニーズに対応してきた技術の蓄積を生かし、タペストリーやランチョンマットの制作も行っている。
主な製造地 | 台東区、港区 |
---|---|
指定年月日 | 昭和58年8月1日 |
伝統的に使用されてきた原材料 | タケ、ヨシ、ハギ、ガマ、ゴギョウ、イヨダケ |
伝統的な技術・技法
- 竹割りは、目をひいた後、なたを用いて大割り及びへぎを行い、小刀を用いて小割り及び削りをする。
- ヨシ、ハギ、ガマ、ゴギョウ及びイヨダケについては、編み出す製品を想定して、ウラ、中、モトの太さをそろえながら選別を行う。
- 編みは、素材のくせを、ためた後、左右均等になるようにウラ、モトを交互に編みあげる。編み方は、1本編み、2本編み、もじり編み、組み編み、蛇腹(じゃばら)編み、亀甲編み、こまがえし又は模様編み等とする。
沿革と特徴
簾の歴史は古く、万葉集の中にも登場している。
額田王が近江天皇(天智天皇)を想いて作る歌「君待つと、吾が恋ひをれば、わが屋戸の簾動かし秋の風吹く」や、清少納言が唐の詩人白居易の「香炉峰雪撥簾看」(香炉峰の雪は簾を撥げて看る)の七言律詩にちなみ、御簾を高くあげた話はよく知られている。
また、簾に縁をつけた高級なものは「御簾」とも呼ばれ、平安時代から宮廷や貴族の屋敷、神社、仏閣などで、部屋の間仕切りや日よけに用いられてきた。
江戸簾は、浮世絵の黄金期の代表的絵師、喜多川歌麿(1753-1806)の作品である「百科園涼み」「簾ごし美人図」「風俗三段娘」などにも、しばしば登場している。
江戸簾の特色は、竹、萩、御形、蒲、よし、などの天然素材の味わいをそのまま生かしているところにある。最も多く利用されている竹は、肉質が固くしまっていて色艶が良い秋の彼岸から春の彼岸までの間に採取する。竹の加工は、材木のように鋸で切るのではなく、目に合わせて細かく割ったり、薄くへいだりするため、幅や長さを一定にするのがなかなか難しいものである。
また用途によっては、竹の裏を三角に削ったり、かまぼこ形にしたり、反らないように柾割にするなど、特殊な割りかたもある。
このように一見単純そうにみえる竹割りにも、その性質を十分に知り抜いた長い経験と高度な技術が必要である。
連絡先
産地組合名 | 東京簾工業協同組合 |
---|---|
所在地 | 〒111-0031 台東区千束1-18-6 株式会社田中製簾所内 |
電話番号 | 03-3873-4653 |