東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

東京仏壇

とうきょうぶつだん

東京仏壇

ジャンルを越えて技芸を結集させた、東京伝統工芸品の総合芸術。
17〜18世紀、寺院の発展によって仏教が庶民に浸透するに伴い、自宅内に置くことのできる仏壇が生まれた。仏壇の内部には、信仰の対象である本尊、先祖の名などを記した位牌などが安置される。東京仏壇は寺院の意匠の影響を受けた緻密な細工、紫檀や黒檀などの唐木や桑の木目を生かした重厚な質感を持ち、簡素で荘厳な美しさを特徴とする。仏壇づくりには、鳳凰や唐草などの伝統的な意匠を施す彫刻、繰り返し漆を塗って木目の美しさを際立たせる塗装、釘を使わずに木を寸法通りに組み立てる指物など、東京の伝統工芸品が誇る様々な技が駆使される。高度な技術が結集した、東京の伝統工芸品の総合芸術と称される所以である。近年は寺院の様式とは無縁の家具調の仏壇が増えているが、東京仏壇は伝統に根ざした仏壇づくりを目指している。「先祖を敬い、命を受け継ぐことへの感謝」を感じてもらえるよう、職人たちが伝統の技を注いだ東京仏壇は、子孫代々受け継がれ、家族の強い絆を育んでいくことだろう。
主な製造地 台東区、荒川区、足立区ほか
指定年月日 昭和57年12月24日
伝統的に使用されてきた原材料 木地は、コクタン、シタン、タガヤサン、カリン、ケヤキ、クワ、サクラ、ヒノキ、スギ、又はこれらと同等の材質を有する用材とする。漆は、天然漆とする。

伝統的な技術・技法

  1. 木地の構造は、剣留(けんどめ)、楔留(ちぎりどめ)及びほぞ組みによる組立式による。
  2. 彫刻は、地彫り、崩し彫り、透し彫り等の技法による。
  3. 塗りは、精製漆の摺り漆仕上げをする。

沿革と特徴

今日仏壇といえば、箱型の置仏壇を思い浮かべる。しかし、本来は、寺院などで仏像を安置する台座のことを指していた。文字どおり「仏像を安置する壇」ということであり、木のほか土や石でもつくられていた。石製のものは、インドや中国の石窟のものを源流にしていたとされている。

日本へ仏教が伝来したのは、飛鳥時代の538年(一説には552年)百済国の聖明王が仏像及び経巻を献上したのが最初とされている。同じく685年には、時の天武天皇が「諸国に、家毎に、仏舎を作りてすなわち仏像及び経をおきて礼拝供養せよとのたまう」と記されている。この宣旨(天皇のお言葉)が次の奈良時代における国分寺、国分尼寺の建立につながるともいわれている。

平安時代までは仏教はまだ貴族のものであったが、鎌倉時代になると仏教も、貴族仏教から武家仏教へと変化していき、法然、親鸞、日蓮などの布教により庶民の間に広まっていった。

徳川幕府は、幕府を頂点とした封建制確立のため、仏教に対する保護と強化を進め、過去帳の整備により寺院の力も大きくなり、都市には多くの寺院がたてられるようになった。

東京仏壇は、元禄のはじめ、江戸の指物師が、仕事の合間に桑や欅などの堅木材を使い、独自の技術・技法によって比較的淡白で飾りの少ない仏壇を作りだしたのが始まりとされている。そして、仏壇に黒檀、紫檀などの唐木材を最初に使った人が、江戸仏師で三代目安田松慶(しょうけい)(1840年ころ)だといいつたえられている。

今、東京仏壇はこれらの技術を綿々と受け継ぎ、その優美さは見るものを魅了し、自然と頭を垂れずにはおられない不思議な荘厳さを備えている。

連絡先

産地組合名 東京唐木仏壇工業協同組合
所在地 〒120-0005 足立区綾瀬4-9-32 コーポすみれ1階
電話番号 03-3620-1201
産地組合名 東京宗教用具商業協同組合
所在地 〒104-0061 中央区銀座7-14-3
電話番号 03-3542-5771