東京の伝統工芸品東京の伝統工芸品 Traditional Crafts of Tokyo

江戸漆器

えどしっき

江戸漆器

金属でもない、陶磁器でもない。食卓に漆器という選択肢。
海外では、かつて陶磁器のことを「china」、漆器のことを「japan」と呼んだほど、漆器づくりにおいて日本は世界をリードしてきた。漆を何十回と塗り重ねることで生まれる、陶器に負けない堅牢さと美しい光沢。漆を塗っては拭き取る作業を繰り返すことで浮かび上がる、木目を生かした質感。木の器に様々な表情をもたらす高い技術力と、腐食やゆがみを防ぐ漆の特性によって、漆器は長い間、庶民に愛用されてきた。漆器は保温性・断熱性にも優れ、温かい料理は冷めにくく、熱い汁を入れても持ちやすい。滑らかな手触りは手になじみ、口当たりも良く、料理や飲み物の味を引き立てる。普段使いの食器として発展を遂げた江戸漆器は、ほかの漆器産地に比べて伝統的な制約がなく、新しいデザインにも積極的に取り組んでいる。箸や椀などのほかに、ピアスや簪といったアクセサリー、雑貨などを制作。ガラス素材で漆器を作る新たな挑戦も始まっている。
主な製造地 台東区、中央区、足立区ほか
指定年月日 昭和57年2月4日
伝統的に使用されてきた原材料 漆は、天然漆とする。木地は、クリ、ケヤキ、ホオノキ、サクラ又はカツラ若しくはこれらと同等の材質を有する用材とする。

伝統的な技術・技法

  1. 下地造りは、こくそ、布着せ、さびつけ、中塗り又はとぎ等による。
  2. 塗りは、塗り立て、ろいろ塗り又は変わり塗りによる。
  3. 加飾は、蒔絵(まきえ)、螺鈿(らでん)又は沈金(ちんきん)による。

沿革と特徴

私たちの暮らしの中で、古くから使われ続けてきた、漆塗りのお椀や重箱などは毎日の生活はもちろん、お正月やお祝事に登場し食卓を賑わしている。

今日でも親子数代にわたり大切に使っている家庭も多いことと思われる。

漆は一度乾いてしまうと酸やアルカリなどの影響を受けず、熱や電気に対する絶縁性が強いという性質を持っている。

また塗料としての役割だけでなく、木地の汚れや腐食を防いだり強力な接着剤としての働きもする。

漆の木は、秋には鮮やかな紅葉となる落葉樹で、日本や中国などに成育分布している東洋の特産物といわれている。

第二次世界大戦までは、日本でも良質の漆が採れましたが、今日では、ほとんど中国から輸入したものを使っている。

一つの漆器ができあがるまでには、漆の木から液を採る「漆掻」や、お椀や重箱などの素地加工を行う「木地師」、漆を塗る「塗師」、文様を描き金粉や銀粉などを施す「蒔絵師」など幾人もの職人の手を経てできあがる。

また塗りの仕事は時間との闘いである。表面が乾いたからといってすぐ次の塗りに移ったのでは、中まで乾いていないこともある。このため、特に慎重に行います。木地固めから下塗り、中塗り、上塗りまで漆を塗っては研ぎの作業を繰り返し行うため、根気のいる仕事である。

従って良い品物ほど塗りの回数が多いといわれている。

海外では陶磁器のことを「チャイナ(china)」と呼び漆や漆器は「ジャパン(japan)」と呼ばれていたように、日本では古くから多くの漆器が生産されてきた。

連絡先

産地組合名 東京都漆器商工業協同組合
所在地 〒103-0021 墨田区緑2-21-9
電話番号 03-5600-9401